11/12
前へ
/57ページ
次へ
「だが君は違う。俺の姿も力も見た。そのままにはしておけない」  尊琉はおごそかに告げる。 「俺の神たる姿を見たものは殺すか、嫁にするか、どちらかだ」 「そんな……」  おじけづいて身を引く萌々香を、尊琉はぐっと抱き寄せる。  彼の目が鋭く光る。 「だが、殺す必要はない。君は俺と結婚する。そうだろう?」  どきん、と心臓が大きく脈うった。  どうかしてる、と萌々香は自分を思う。  まるで脅迫なのに、彼にときめくなんて。 「また私をからかって……」 「からかってなどいない」 「だけど夕方、急にいなくなって。連絡先だって知らないのに」 「あれは……ちょっと急用で。すまなかった」  恵武が興奮して耳と尻尾をだしてしまったので、急遽姿を消したのだ。 「何も言わずにいなくなって」  声に涙が混じり始めた。 「絶対、からかわれたんだと思った」 「悪かった」  尊琉が萌々香を抱きしめる。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加