4/7
前へ
/57ページ
次へ
「は、離して!」  萌々香は叫ぶ。  男はつかんだ手に力をこめる。骸骨のお面は不気味な薄笑いをたたえている。くく、と笑い声が漏れた。  その後ろから、一人が萌々香の口をふさいだ。 「——!」  萌々香は声をあげようとするが、くぐもった声が漏れただけだった。男の手をふりほどくことができない。 「な、ハロウィンは狙い目なんだって」  一人が笑う。 「うかつな女が増えるからさ」 「まだ前日だってのに」 「顔を隠しててもハロウィンだと思われるだけだしな」 「トリックオアトリート!」 「甘いのはお前の頭の中身だっての!」  男たちがまたげらげらと笑う。  すぐ近くに大きな黒い車が止まっていた。一人が扉を開ける。 「その人を離せ!」  かわいらしい声がして、男の子が小さな手でパンチを繰り出した。 「邪魔だ!」  あっさりと男の子は蹴り飛ばされた。男の子は地面に転がり、うめき声をあげた。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加