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25歳の同窓会
西山隆(25)はプロのバンドマンを目指し、毎月1~2回ライブハウスでライブを行っていた。
対バン(※ワンマンライブ以外の共演者)はここ1年はメジャーデビュー直後のプロのツアーバンドだったり、地元でも活動が活発なバンドばかりで、当時隔週発売されていた、総合エンタメ情報誌「ぴあ」のピックアップライブのコーナーにも掲載されるほどの地元での知名度は上がっていた。
チケットノルマは毎回30枚。
バンドメンバーの4人で割れば7枚程度なのだが、友達や常連になってくれたお客さんでも、2,000円のチケットをさすがに毎回買ってくれる訳もなく、対バンが有名な場合と誰も知らない地元バンドかで、明らかに売上げが違っていた。
売れなかった場合は、自腹をきってチケットノルマをなんとかこなしていた。 実家暮らしのメンバーが羨ましかった。
ライブハウスのブッキング担当から次回の誘いの連絡があった場合、メンバー全員の予定を聞いて可・不可の返答をするのだが、基本誘いがあったら全て参加できるよう、シフト制のコールセンターや、出勤可能時のみ出勤するホテルのウェイター業務のような、多少きつくても時給がよく休みの希望が通るアルバイトを選んでいた。
当時は世間は「就職氷河期」と呼ばれ、大学の同級生達はかなり就職に苦労していたようだが、バンドマンを真剣に目指すため学校を中退した隆にとっては、そんなことより翌月のライブのチケットのはけ具合や、なかなかバンドのキラーチューンにになり得るような曲がかけず、そちらの方で苦労していた。
ある年の年末、大みそかに開催される「高校時代の同窓会」の誘いを受けた。
卒業から7年。たった7年だが皆それぞれ変化を遂げているだろう。帰省を兼ねて、同窓会のハガキにも「参加する」に丸をつけて返送した。
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