序章 神の放物線 32
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序章 神の放物線 32
夢と現実を振り払うように、矢儀は、
眼下
(
がんか
)
の
献花
(
けんか
)
の山から目を
逸
(
そ
)
らした。 藤津は一人で喋り続ける。 「いくら好きな男が振り向かず、カッとなったとはいえ――」 テラスから
視線
(
しせん
)
を
戻
(
もど
)
した
藤津
(
ふじつ
)
と目が合う。 藤津は、
真顔
(
まがお
)
で
問
(
と
)
うてきた。 「人を好きになると、
我
(
われ
)
を忘れるもんなんか?」 「俺が知るか!」 わかっていて
訊
(
き
)
くのだから、腹が立つ。
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