序章 神の放物線 18

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序章 神の放物線 18

 ()くし()てて多少(たしょう)は気が()んだのか、藤津(ふじつ)はフンと大きく(はな)(いき)()く。    眼鏡(めがね)のブリッジを持ち上げて鼻に掛け直す姿(すがた)は、いかにも優等生(ゆうとうせい)だ。が、結局のところ藤津も、不可解(ふかかい)事故死(じこし)興味津々(きょうみしんしん)らしい。 「ま、どうせおまえは知らんやろうけど」と、わざわざ前置(まえお)きをして続けた。 「亡くなった三年の岡屋(おかや)多恵(たえ)って、実は躁鬱病(そううつびょう)じゃったんと。教室の窓から飛び降りた日も、午後から具合(ぐあい)が悪くて、保健室(ほけんしつ)で寝ちょったらしい」  藤津は、得々(とくとく)と話す。  言い終えると、前のめりだった身体(からだ)が後ろに戻った。    地図の上の手が、少しだけ()く。  しめた! 地図を回収(かいしゅう)できる。
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