1人が本棚に入れています
本棚に追加
序章 神の放物線 2
中央棟の二階屋上テラスに、女生徒の甲高い声が響き渡る。
まるで、山の天辺から叫んでいるような、人目を憚憚らない大声だ。
これには、さすがの矢儀恭介も、分厚い本から顔を上げた。
同じテーブルを囲む二人の部員は、すでに部室の窓の外に目が釘付けになっている。おそらく、本など読んでいなかったに違いない。
(ったく、何なんだ、いったい)
矢儀が諦めの体で、視線を窓の外に向ける間にも、けたたましい叫び声は続く。
「もう、部活、始まっちょるやろ。早く行かんにゃあ、牛見先生に怒られるよ」
テラスにいる生徒たちが皆、好奇の目で、隣の教室棟を見上げている。
最初のコメントを投稿しよう!