序章 神の放物線 2

1/1
前へ
/69ページ
次へ

序章 神の放物線 2

 中央棟(ちゅうおうとう)二階屋上(にかいおくじょう)テラスに、女生徒の甲高(かんだか)い声が響き渡る。  まるで、山の天辺から叫んでいるような、人目を(はばか)憚らない大声だ。  これには、さすがの矢儀恭介(やぎきょうすけ)も、分厚い本から顔を上げた。  同じテーブルを囲む二人の部員は、すでに部室の窓の外に目が釘付けになっている。おそらく、本など読んでいなかったに違いない。 (ったく、何なんだ、いったい)  矢儀が(あきら)めの(てい)で、視線を窓の外に向ける間にも、けたたましい叫び声は続く。 「もう、部活、始まっちょるやろ。早く行かんにゃあ、牛見(うしみ)先生に怒られるよ」  テラスにいる生徒たちが皆、好奇の目で、隣の教室棟(きょうしつとう)を見上げている。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加