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序章 神の放物線 21
「ああ――そういえば……」
他はまだ授業中だから、廊下は静かに歩けよって、倉増先生にしつこいほど言われたっけ。
「少し早めに教室に戻る途中、岡屋多恵を見かけたんよ。二階の廊下を、帰ってきた俺らとは逆方向に、走り去って行ったんよの」
「そーなん? 俺は全然気づかんかったけど。よう、見ちょるの」
矢儀は、心底感心する。
「ってか、普通、気づくし、気になるじゃろ。まだ、チャイムがなる前やったんじゃし」
藤津が、呆れた視線を寄越す。
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