序章 神の放物線 29

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序章 神の放物線 29

 (うそ)だとわかっていて、わざわざ(うわさ)の数々を披露(ひろう)するのだから、始末(しまつ)(わる)い。  ()()は「そもそも(うわさ)が本当なら、とっくの昔に、俺の耳に入っちょったじゃろうし」と、平然(へいぜん)と言ってのける。  ()()は開いた口が(ふさ)がらない。  なまじ当たっているだけに、空恐(そらおそ)ろしい。 「俺は、おまえの将来(しょうらい)心配(しんぱい)じゃわ」    思わず、心の声をそのまま口にした。    人が真面目(まじめ)に気に()けているのに、藤津は、まるでどこ吹く風だ。
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