序章 神の放物線 3

1/1
前へ
/69ページ
次へ

序章 神の放物線 3

 声の(ぬし)と思われる女生徒は、三階の教室の窓から大きく身を乗り出していた。  薄い西日に照らされた横顔が、妙に(なま)めかしい。長い髪を掻き上げる姿といい、とても中学生には見えない子だ。  珍しく矢儀が女の子に気を取られていると、テラスから投げやりな返事がある。 「掃除が長引いたんで。すぐ行きますって」 「左内」と呼び捨てにされた男子生徒は、テラスの真ん中で、三人の女の子たちと立ち話をしていた。振り返った横顔が、見るからに迷惑そうだ。  一緒にいる女の子たちは、一様(いちよう)に顔を見合わせ、微苦笑(びくしょう)する。  すぐに行くと言いながら、左内は再び女の子たちと話に(きょう)じ、その場を立ち去る様子はなかった。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加