序章 神の放物線 33

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序章 神の放物線 33

「ほうじゃの。すまん、訊く相手を間違(まちが)えたわ」  芥子粒(けしつぶ)ほども悪いとは思っていない口調(くちょう)だ。  矢儀は、目の前のしれっとした顔を、(にら)むに(とど)めた。  (くち)では()てないので、さっさと話を本題(ほんだい)に戻す。 「もしかして、本当に錯覚(さっかく)した、とか?」    ()()天井(てんじょう)見上(みあ)げ、想像(そうぞう)してみた。 「ちょうど、この(うえ)じゃろ。岡屋(おかや)多恵(たえ)が飛び降りた三年生の教室って。テラスを同じ高さに見るのと、上から見るのとじゃ、案外(あんがい)距離感(きょりかん)が違うんじゃないん? ましてや、岡屋(おかや)多恵(たえ)は、(われ)を忘れるくらい興奮(こうふん)しちょったし」
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