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序章 神の放物線 36
「確かに、上から見ると、まるでテラスに飛び移れるかのような錯覚を起こす」
意外にも藤津は、矢儀の思いつきを認めた。が、続きがあった。
「言うても、例えるなら、食品サンプルを美味そうって思うくらいの錯覚じゃけどの」
普通は食わんやろ、と藤津は冷ややかに言い放った。
矢儀は、顎に手を当てて考え込む。
それでも、岡屋多恵は食べた。
つまり、岡屋多恵の目には、サンプルが本物に見えた。
本当に、テラスに飛び移れると信じて疑わなかった。
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