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序章 神の放物線 37
だから、窓枠に立った岡屋多恵の表情には、わずかな恐怖心すら、なかったのかもしれない。
ただ……
矢儀は、気になって問うてみた。
「ちなみに、岡屋多恵って三年一組なん? それとも、たまたま一組に、おっただけ?」
一組だと、藤津は人差し指で天井を指して、口を尖らす。
「じゃけぇ、ますます不思議なんよ。毎日見ちょる食品サンプルが、ある日、突然、本物に見えるか?」
まるで、矢儀の思考を読んでいたような口振りだ。
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