序章 神の放物線 5

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序章 神の放物線 5

 しかし、それは、織田村に限ったことではない。  女生徒を遠巻きに眺めている誰もが、少しも慌てていなかった。  それどころか、どこか白けた雰囲気さえ漂っている。  皆、女生徒の奇行(きこう)をパフォーマンスだと思っているのだ。  矢儀も同感だった。  だいたい、隣接(りんせつ)しているとはいえ、建物と建物の間は、七~八メートル近くは開いている。加えて、三階から二階という高低差もある。  どう考えても、飛び移れるわけがなかった。  女生徒は窓枠に手を掛けると、ゆらゆらと立ち上がった。  結構な高さがあるだろうに、まるで怖がる様子がない。
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