序章 神の放物線 50

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序章 神の放物線 50

 兼行(かねゆき)も、休み時間が残り(わず)かとわかっているらしく、「それがさ、禁忌(きんき)の石段なんと」と、口速(くちばや)に続けた。 「つまり、通っちゃいけん石段らしいんっちゃ。なんでも、昔から未遠(みとお)じゃあ言われちょるらしい。その石段を通ったら(たた)られるって」  見上げてくる眼差(まなざ)しは、かつてないほど真剣(しんけん)だった。  いつもなら、百七十センチ近い()()(かたわ)らに立つと、兼行(かねゆき)途端(とたん)機嫌(きげん)が悪くなる。  十センチ弱の目線(めせん)の差を、気にしているらしい。  なのに、今は身長コンプレックスなど、まるで意識(いしき)(そと)と見える。
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