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序章 神の放物線 6
一直線にテラスを見下ろし、口元にはわずかな笑みが浮かんでいる。
矢儀は不意に全身の毛が逆立つの感じた。尋常ではない。
(まさか、本当に飛ぶ気じゃ――――)
その時、「せえの」と、女生徒の掛け声が聞こえた気がした。
細い足が窓枠を蹴る。華奢な身体が宙に舞う。
近くで誰かが息を呑んだ。
当然、まるで届かない。空中に描かれた放物線は、絶望的に短かった。
女生徒は、テラスの遥か手前で落ちていく。
届かなかった細い指が、空を掻き毟りながら、建物の間に消えていった。
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