白銀世界のサタンクロース

1/4
前へ
/4ページ
次へ
 ちらちらと舞う粉雪が冬の日差しにキラキラと輝いている。  そこここに上がる楽し気な男女の笑い声。周囲の木立には赤と金の装飾が施され、クリスマスムードを盛り上げている。 「いいなぁ、みんな楽しそう」  カップルであふれかえるゲレンデを見やって、美香は恨めし気に息をついた。  おりしも上がる、甲高い女性の笑い声。蛍光ピンクのウェアを着た女性が、長身の男性の腕にしがみつくようにしてこちらを見ている。  かすかに媚びを帯びた甘ったるい声は、ひとりぼっちの美香を嘲笑うかのようだ。 「だめ、そんなこと考えちゃ」  慌てて頭を振って、被害妄想じみた考えを脳内から追い出した。 「たまたまこっちを向いてただけ……誰も私のことなんか見てるわけないもの」  自分で自分に言い聞かせ、余計にみじめになってしまった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加