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その日から一週間ほど謎の高熱で床に臥せっている間、何度も百合子さんの夢を見た。
彼女はとても悲しそうに僕のほうを、ただ黙ってみているばかりだった。
その時、決まって先輩も最後に現れてこういうのだ。
「お前にはがっかりだよ」
返す言葉もなく、僕はただ百合子さんを無言で見つめることしかできなかった。
熱が下がり、どうにか起き上がれるようになったその朝。
玄関のインターホンが鳴らされた。
もしかして、と思いながらドアを開けた先に立っていたのは、百合子さんではなく険しい顔つきのスーツ姿の男性二人だった。
彼らは警察だと名乗り、それから続いてこう言った。
「実は、山中で女性の転落遺体が発見されました。調べたところ、あなたと交際していた女性の様でして、その女性がはめていた指輪から彼女ではない人物の指紋が出てきました。それと、彼女が倒れていた真上にあった崖に、車が止まっていた形跡もありまして。車はお持ちですか?」
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