じい様はボケたのか

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 じい様が言った通りだった。  やることは何もなく、至福である。  与えられた部屋の畳の上で、ごろつきながらスマホを弄る時間が何よりも贅沢だ。  ただ問題が全く無い訳ではなかった。  問題は、じい様だ。  最初は気を付けていたんだと思う。ただあまりに、俺が部屋に引きこもっているため存在を忘れたのかもしれない。  気づいたのは二日目を過ぎたあたり。昼時に部屋から出てトイレに行く途中で見かけたじい様は誰かと話していた。  来客かと思ったが、縁側に一人で座っている。漏れ聞こえて来る声には、ばあちゃんの名前が混ざっていた。 「じい様」  少し部屋に戻り、歩きながら声をかける。 「何だ」 「昼飯なに?」  縁側から続く部屋に入って行き、何事も無かったように空腹を告げた。 「もうそんな時間か。素麺でいいか」 「うん。二束はいける」 「ちょっと待ってろ」  じい様が、よっこいせと、立ち上がる。 「なあ、じい様」 「何だ?」 「誰かと話してた?」 「いや?」 「聞き間違えかな。爆音でASMR音声聞いてて耳やられたかも」 「エーエス? わからんが、そういうのは程々にしとけ」  耳をほじって言う俺に呆れ顔をして、じい様は昼飯の準備に取り掛かった。
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