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2.
夫が出張から帰って一ヶ月が経った。
彼は毎朝定時に起きて仕事へ行き、夕飯のおともにビールを一缶あける。休日は家でのんびりしたり、公園で息子たちと遊んだり、昨日の土曜日には趣味の草サッカーにも行った。その生活パターンは以前と変わらず、まるで変化など何もなかったかのように普通だ。
会社では彼の挙動や仕事ぶりに誰も違和感を覚えていないのだろうか。誰かに聞いてみたいけれど、あいにく夫の職場に知り合いはいない。
日曜日のお昼前。夫は図書館で借りた文庫本を読みながらソファでくつろいでいる。LDKには私がドリップしているコーヒーの香りが漂っていた。
「ママ見て! スパイラークでタヨウセイジャーのシールもらえるって!」
テレビを観ていた一哉が興奮した様子で振り向いた。目を向けると、画面にはファミリーレストランのCMが映し出されている。
「行けばもらえるわけじゃないでしょ。ほら、二千円ごとにランダムで一枚だって」
「シールほしい! ねぇ、今日のごはんスパイラークにしようよ!」
「ええ? でも」
「お願い! タヨウレッドのシールが出たら凌二にあげるから!」
長男は隣にいる弟を味方につける作戦に出たらしい。推しの名前を聞いた次男は目を輝かせ、「タヨウレーッド! タヨウレーッド!」とコールを始めた。
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