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「パパはタヨウグレーが好きかもしれない。性別年齢不詳なんて、ミステリアスでいいじゃないか」  夫が言うと一哉は「なかなか目の付け所が良い」と言わんばかりに頬を上気させた。 「グレーは無口で人ぎらいだけど、ほんとはすごく優しいんだ! いいやつだよ!」 「そうか、それは推せるなぁ」 「じゃあ、りょうちんグレーのシールあてたらパパにあげるね!」 「ありがとう。でもパパはレッドとブラックが出るよう願ってるよ」 「楽しみだなぁ! 早く夜にならないかなぁ!」  盛り上がる三人を見ていたら、いつのまにかドリップはすっかり終わっていた。  十人もレンジャーを出すなんて正気の沙汰じゃない。子どもがそんな人数を認識できるわけないだろう。  夫がそんなふうにタヨウセイジャーを批判していたのは、半年前の春だったのに。  ねぇ、あなたは誰ですか?  いっそ直接、夫にそう聞いてみたい。けれど、その反応が怖くもあった。子どもたちが喜んでいるのだから細かいことはいいじゃないか、そんな考えも頭をよぎる。  とりあえず、夕飯は作らなくてもいいんだな。私は楽観的にそう思い、すでに少しぬるくなったコーヒーをふたつのマグに注いだ。
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