白い本

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 なんと、インクに戻ったとばかり思っていたロボットが復活して集まりだしたではないか。  「くそお! しぶとーい!」  彼女は再び時間を巻き戻した。                *  昼休み、恵子は委員長の北島の知恵を借りようと屋上に呼び出した。  彼女はゴンタロウや恵子の秘密を知っている唯一の同級生で、これまでも何度も知恵を貸してもらっている。  「頼む! 委員長! ピンチなの!」いきなり恵子から頭を下げられて、北島は困り顔をしていたが、すぐに「わたしなら、その小包を開けない! その敵は戦っちゃダメ、どう考えても、あなたの装備じゃ勝てないわ、勝つと思ったらダメ、思えば負けよ!」  急に昭和の歌謡曲のようなことを言い出した。   「へっ?」  「攻略したかったら、勝つより、負けない方法を考えないとダメ」  「あの、それって?」まるで禅問答をしてるようにしか思えない。恵子は首を傾げた。  北島の話は続く。 「開けないで、そのままカチンコチンしちゃったら、それでOK」  「どうやって? コンクリートを使うわけ?」  すると、北島は具体的な対策法を提案してきた。どういう頭をしてるのか、いきなり結論だけを話して戸惑わせるが、よく聞けば論理的に物事を考察してるのがわかる。それが北島の思考パターンだった。  「うふふふふ、包みを開けたら襲ってくるってことは、そいつは熱か光に反応して稼働するんじゃないかしら? あとは空気の流れに敏感なはず。そんなのに火を近づけたら猛スピードで回避してくるわよ。つまり火炎放射器はNGね。背中のボンベに穴を開けられて、反対にこっちが丸焦げになるわ」  「ふん、ふん」  「だからさ、小包の中では空気の流れも光もさえぎられるから、大人しくしてるわけよ。でもくどいようだけど、火の中に突っ込んだら、大変よ。どこまで熱に耐えられるか知らないけど。分裂するんだから、無数の大口径の拳銃を焼却炉で焼こうとするようなもんじゃん、とっても危険だわ、焼却炉の扉くらい、すぐ貫通して破られちゃう」  「おお! そりゃそうだわ、わかった! 冷やせばいいのね!」  「そっ、液体窒素で急速冷凍すれば、あっというまにカチンコチン。動けなくなるし、マイクロチップもナノサイズだから、すぐ風邪ひくわ」  「わかった! お父さんに連絡するわ! ありがとう! 委員長、いつも助かるわ~!」  「いいのよ、役に立てて、あなたのお父さんの命にかかわることだもんね」  そう言って、北島は微笑んだ。  恵子はスマートホンをスカートのポケットから出した。  今度は恵子は現場に行かず、作業はすべてゴンタロウに丸投げした。  で、あっさりと敵は退治された。  恵子の進言で、ゴンタロウと自衛隊が保管している同タイプのアンドロイドが、感電しても電子頭脳が壊れないように改良されたのは言うまでもない。                     了   
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