8人が本棚に入れています
本棚に追加
何が悪い。何がいけない。俺はこの家を支えている主人だぞ――
「その異世界には三つに分かれた道があるというわ。それって、過去、現在、未来らしいわよ」
あの分かれ道のことか――言われてみればそうかもしれなかった。
一つ目は、やり直したくても戻ることのできない一方通行の「過去」、二つ目、俺の戻りたかった「現在」の道を跳ね返されたのは、……妻の呪文のせいだった?
あの頃、確かに妻は空に向かってブツブツつぶやいていた。そんな呪文を呼び寄せてしまうほど妻は追い詰められていた――?
「それで? おじいちゃん、準備はいい?」
「あ? 何が」
孫娘は不敵に笑った。
「その呪文も伝わってるの」
「ちょっと待て」
「そいつが現れたら、ひ孫だろうと玄孫だろうとそうするように、って代々遺言されているのよ」
あいつは、妻は、そんなに。子々孫々末代まで拒否するほどに。第三の道――俺が未来へ戻ることまでも、その子孫によって封じるほどに?
俺が何をした? 何をした? 何をした――
あの地獄のようなパラレルワールドで、俺が再び生き抜くことができるとでも。妻が迎えてくれる一言をもう支えにはできない中で。
トラックに撥ね飛ばされてあの世へ直行する方がマシだ――
「バイバイ、おじいちゃん」
「ま、待て。待ってくれ……」
「ʩëgĢĠɛʚɝɣʩʩʩ……」
そうして俺はまた、荊と毒虫だらけの世界に立っていた。
(終)
最初のコメントを投稿しよう!