おかえりが聞きたくて

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 何が悪い。何がいけない。俺はこの家を支えている主人だぞ―― 「その異世界には三つに分かれた道があるというわ。それって、過去、現在、未来らしいわよ」  あの分かれ道のことか――言われてみればそうかもしれなかった。  一つ目は、やり直したくても戻ることのできない一方通行の「過去」、二つ目、俺の戻りたかった「現在」の道を跳ね返されたのは、……妻の呪文のせいだった?   あの頃、確かに妻は空に向かってブツブツつぶやいていた。そんな呪文を呼び寄せてしまうほど妻は追い詰められていた――? 「それで? おじいちゃん、準備はいい?」 「あ? 何が」  孫娘は不敵に笑った。 「その呪文も伝わってるの」 「ちょっと待て」 「そいつが現れたら、ひ孫だろうと玄孫だろうとそうするように、って代々遺言されているのよ」  あいつは、妻は、そんなに。子々孫々末代まで拒否するほどに。第三の道――俺が未来へ戻ることまでも、その子孫によって封じるほどに?  俺が何をした? 何をした? 何をした――  あの地獄のようなパラレルワールドで、俺が再び生き抜くことができるとでも。妻が迎えてくれる一言をもう支えにはできない中で。  トラックに撥ね飛ばされてあの世へ直行する方がマシだ―― 「バイバイ、おじいちゃん」 「ま、待て。待ってくれ……」 「ʩëgĢĠɛʚɝɣʩʩʩ……」  そうして俺はまた、荊と毒虫だらけの世界に立っていた。 (終)
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