おかえりが聞きたくて

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「お隣は全自動洗濯機買ったそうなの。二層式よりずっと便利らしいわ」 「知ってる? セブンイレブン、いい気分、て、夜11時までお惣菜が買えるんですって」 「娘の入学式のときに私が着る服、新調したいの」 「体調が悪いから今日は掃除するのやめたわ」  妻は次々とつまらないことを言い始めた。  そのすべてが気に食わない。楽することばかり考えている。三食昼寝付き、食わせてもらって暇なくせに怠けようとばかりする。  俺はいつも怒鳴っていた。妻が何も言ってこなくても、粗を探すようになった。怠けるばかりだから小太り、見てくれはどうしたって古女房そのもの、くたびれた中年女のくせに、「美容院に行きたい」とまで。 「美容院? 誰に見せるんだ。金なんかかけたって大して変わり映えもしないくせして」  俺の部下の結婚式の仲人をするときに、黒の留袖を買ってやった。そういうときなら仕方ないと美容院も行かせてやった。だが、それからまだ2年くらいしか経っていなかったときだ。なのに祝い事でもなく髪を整える必要がどこにある? 俺の稼いだ金を、何だと思ってる。
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