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解放
◆解放
「おいっ、俺の切手帳はどうした!」
ある日、俺は狂ったように妻に叫んだ。
会社から帰って来ると、切手帳がないのだ。
「切手帳って?」
名称が「切手帳」と書いている訳ではない。無題のアルバムのようなものだ。
「ノートサイズのアルバムみたいなやつだ」
そう説明すると妻は、「あれって切手帳だったの?」と言って、
「銀行の通帳がどこか、あなたの机の引き出しを探していたのよ」そう説明した。
だが、それがどうして切手帳と関係があるのだ、と問うと、
「何か匂うアルバムみたいのがあったから、ゴミ袋に入れて出しておいたの」
最低最悪の妻だ。
切手帳はブックバンドで留めていたはずだ。中を見なかったのか。
「あれってゴミでしょ」
妻はゴミだと言い張った。無理もない。小学校時代から持っていた切手帳だ。もうボロボロだったのだ。だが、それを愛おしい人のように大事にしていた。俺にとっては、替えの効かない宝物なのだ。
「匂うだけで、捨てたのか?」
「だってすごい匂いよ。まるで人間の死体みたいな匂い」
妻はそう言った。妻は元看護師だ。そういった匂いには敏感なのかもしれない。
「ゴミ袋はどこだ。もう出したのか!」
混乱した頭で訊ねた。
すると、まだゴミの日ではないので、庭の隅にまとめて置いてあるということだった。
助かった・・まだ家の敷地内にあるのだ。
ホッと胸を撫で下ろして、庭の隅に目をやると、
あり得ない光景が目に飛び込んだ。
あろうことか、娘がゴミ袋を乱暴に開けていたのだ。
娘はまだ幼い。ようやく庭をよろよろと歩けるようになった程度だ。
その娘がゴミ袋を開けた。よりによって俺のコレクションが入っている切手帳を手にしている。
「おいっ、それに触るな!」咄嗟に怒鳴ったが、娘は聞いてはいない。
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