知らない声

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知らない声

 濃い霧の中を歩いてるようだと女は思った。 別に悲しくはないし 友人の誕生日パーティーのお呼ばれやたった一回のクレームゲームで欲しかったぬいぐるみをGETしたし結婚式にだって出席してむしろ楽しい事だらけだったはずなのに 何故か心の中はずっともやもやしていて何をしてもすっきりしないのだ。 「……あ、宝くじ 一万円当たった……」 銀色の粉まみれの十円玉と指先の下で 笑ってる猫四匹。 ラッキーだから喜ぶべきどころなのだが ほらまた全然何とも思わない。どうして?「…つまんな」 女は深く溜め息つくと十円玉をテーブルに置いて 汚れたままの指でソファーの上のクッションを引っ張ると それを床に置いて その上に ぼふんっ と頭を乗っけて寝転んだ。 「つまんないな……」
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