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「まあ! どうして本を読んでるの、ぽぷりくん!」
ぽぷりは深くため息をついた。
「どうしてって、読みたいからですよ。ぼくがなにか読んでるのは、いつものことでしょう、ぷりんさん」
「そういうことじゃないわ。わたしがたいへんたいへん! ってたいへんがっていたのに、どうしてそんなに優雅におちついていられるの!」
彼女──ぷりんは、お気に入りのエプロンを巻いた腰に手を当てて、とっても怒っている。まずったな。そう思って、ぽぷりはあわてて言った。
「で、ぷりんさん、今日は一体なにが「たいへん!」なんですか?」
ぷりんはまた「たいへん!」という顔になって、「そうなの、あのね、」と口火を切った。
「あのね、プチトマトがきれいに成ったの! とっても美味しそうよ!」
そうしてふたりは、夏の朝陽の真っ白にまぶしい庭に、お嬢さんのドレスみたいな可愛らしい日傘をさして、ならんでプチトマトの鉢に顔を寄せていた。日傘を差しかけてやりながら、ぽぷりはふぅんとうなる。
「きれいに真っ赤になりましたねえ」
「そうでしょ、そうでしょ!」
ぷりんは自慢げに、エプロンをつけた腰に手を当ててふふんと鼻を鳴らした。それを、ぽぷりはじっとりと横目で見る。ちょっといじわるを言いたくなって、
「毎朝、僕の朝ごはんよりもはやく水をあげてましたもんねえ」
なんて、嫌みっぽいことを言ってしまう。ぷりんは心なしかしょんぼりして、
「だって、きっと喉がかわいてると思ったんだもの」
「植物ややさいに喉はありませんけどね」
素知らぬ顔で言ってから、あれっ、と首をかしげる。
「こっちのトマトは黄色いままですね。日当たりがわるいのかな」
指差した先には、たしかに黄色いトマトがある。おおきさは赤いのと変わらなかったけれど、それはまだ熟していないみたいだった。
ぽぷりの言葉にそちらを覗きこんだぷりんは、肩をすくめてくすりとわらった。
「やあねえ、ぽぷりくん。それは黄色く成るトマトよ。そのままでいいの」
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