六 努力、未来!

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六 努力、未来!

 町の教会で行われた結婚式は華やかであった。祝福されている二人をセリナは早く終わらないかな、と思い見ていた。やがて昼下がり、祝賀会が始まった。 「セリナ、私は向こうで商談先の人と話をしているからな」 「はい、お父様。私は壁の花になっていますので」  そんなセリナを参加者はヒソヒソと語っていた。おそらく元婚約者だと嘲笑っているのだろう。  ……まあ、本当のことだし、あ、あの壁際がいいな。  セリナが進もうとすると、誰かの足に引っかかった。転んだセリナに、今度は葡萄酒がかかってきた。 「あら? ごめんなさい」 「わざとじゃないのよ」  意地悪そうな女達は、花嫁の友人である。彼女達は以前、バロンに振られた女だった。  ……だからと言って、ここまでするかな……  セリナは立ち上がったが、今度は背後から押されてテーブルに突っ込んだ。グラスと料理が盛大に床に落ち、軽い悲鳴が起きた。 「…………痛たた」 「何をしているのよ。パーティーを壊す気?」 「セリナ。お前、俺に恨みがあるのか」  花嫁と花婿の言葉を聞き、そんなものはありませんよ、と痛む腰をさすっていた時、声がした。 「あるな」 「え」  ……なぜここに?    急に現れた彼はセリナを抱きしめた。 「少なくとも俺はある。卑劣な手で俺の大事な娘を虐めるとは……この会は、そうか、『公開処刑』というやつか?」 「いえ、あのその」  ラルトを知る花婿は青ざめた。花嫁は知らずに噛み付く。 「あなたは誰よ! これは私の結婚式よ」 「黙れ! 『見せつけ女』め!」  ラルトは立ち上がった。 「私はこの地を収めることになった第三王子のラルトだ。本日、結婚式があると聞き、祝福するつもりで参ったが、これはどういうことだ?」  会場はしんとした。やがて花婿の父が謝りにきた。 「王子! 申し訳ありません、で」 「これがとは……貴殿はどのような毎日を過ごしているのだ?」  ラルトは参加者を見渡した。 「よく聞け! この夫婦は後継者として王都に届出があったが、たった今取り消す」 「え。そんな」  花婿と父は青ざめた。ラルトはセリナの肩を抱く。 「以上だ。まあ、結婚はどうでもいいがな」  そしてラルトはボロボロのセリナを連れ出し、馬車に乗せ隣同士に座る。 「ふふふ……すべての嫌がらせが起きたじゃないか! これはすごい」  ……あ。地雷だったんだ。  恋愛話でよく聞く話が目の前に起き、ラルトは興奮していた。そんな嬉しそうな彼にセリナは尋ねた。 「あの……どうしてここに?」 「そうだった! アンから手紙が来たんだ。お前に危険が迫っていると」  ……そうか。ただ、それだけか。 「ありがとうございます」 「セリナ、いいかよく聞け」  ラルトは真顔で見つめた。 「俺は王都に戻って仕事をしていたんだが、お前の恋の話が気になって仕事が手につかないんだ」 「それは、アン様がご報告しているはずですけれど」  ラルトが気にしていた使用人達の恋話はアンが報告しているはずである。だがラルトは頬を染めた。 「ち、違う。お前のことだ、お前と、その俺の」 「え」  ラルトはセリナの手を握りしめた。 「とにかく! 俺はお前と恋話をしたいんだ。だからこの地に赴任することにした」 「……本気ですか」 「嫌か」 「いえ、その」 「俺はどうせ厄介者だしな」  ……確かに、厄介だったけれど。  こんなに話が合う人はセリナも初めてだった。それに今助けてくれた彼は最高にかっこよかった。 「あの、わかりました」 「そうか」  やがて馬車が一瞬止まった。セリナは王子と手を重ねた。 「これからも、どうぞ。よろしくお願いします」 「セリナ……」  ラルトは微笑みながらおでこをくっつけてきた。セリナも笑顔で答えていた。
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