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この世界では、子どもが生まれると神からの神託を授けられる。各国の神殿は、貴族の子どもから貧しい平民の子どもまで分け隔てなく歓迎しているのだとか。どんな才能を持っているのかを知ることで、宝である子どもたちがより良い人生を進むことができるからだそうだ。
今日もまた赤子を連れた一組の夫婦が神殿にやってきた。笑いさざめく家族たちの後姿を、指をくわえて見守ることしかできない。彼らのような家族の形は、私からあまりにも遠すぎるものだったから。幸福を約束するはずの聖なる神託。けれど私にあるのは、残酷な現実だけ。
――お前の声が、世界を滅ぼす――
恐ろしい神託が下されたとき、私の家族はどんな反応をしたのだろう。細かい事情はよくわからない。ただひとつ確かなことは、私は神殿の中で隠されるように育てられてきた厄介者だということ。「穢れ」である私に関われば自身が穢れるのだとか。おかげさまで私は物心ついてこの方、ただの一度も誰かに触れた記憶がない。
手を繋ぐことも、頭を撫でられることもなく。抱きしめられることも、言葉をかけられることもなく。徹底して存在を無視される。本当にこの世に存在しているのかわからなくなった。
そもそも、光の射し込まない神殿の奥で最低限の世話をされることは生きていると言えるのだろうか。それでも罪人のような暮らしは私にとって当たり前の生活で、それ以上を望むべくもなかった。あの方――私の騎士さま――に出会うまでは。
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