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3、掃除当番と女
学校の授業が終わると掃除当番があった。当番だから毎週ではない。何週かに1週当番が回って来た。伸子の班にもツッパリがいて、いつもサボっていた。
伸子は腹に据えかねていたので直接文句を言った。
「あんたもやりなさいよ!」
そしたら、そのツッパリは伸子を蹴った。伸子は蹴られたのもムカついたが、それよりもその後の言葉に殆ど激怒した。
「掃除なんて女がやるもんだ!」
どうして、ソコに「女」が出て来る?
次のアクションを出す前に伸子を蹴ったツッパリは走って消えてしまったので、その言葉は言い逃げとなった。
伸子の父は教育熱心であったが、反面、女性蔑視を平気で垂れ流す人間でもあった。日常的に伸子に家事を強要した。
「お茶を入れろ」
「ちょっと待って」
これだけのやりとりで伸子が殴られるのは日常の事だった。弟は勉強が出来なくても「お茶を入れろ」なんて言われていなかった。
女だけだ。
伸子の父は矛盾した思想の持ち主だった。社会で自立する女であれと願いを込めて宮本百合子の小説「伸子」から、長女にその名前を付けたにも関わらず、家庭内での性的役割分業に疑問も持っていなかったのだ。
この二つの矛盾する考えは、子供であり女である伸子を苦しめることになった。
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