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4、子供の為に
伸子の父は、高学歴だったが成育環境に恵まれなかった。一流企業に就職しても箸一つ満足に持てない父には居場所が無かった。典型的な内弁慶といってもいい性格で、会社になじめなくて直ぐ辞めてしまっていた。
転職するたびに転職先の会社は小さくなり、未来の希望も小さくなっていった。
伸子の記憶の中の父は本を読み、クラシック音楽を好み、ギャンブルの虜だった。今で言うパチンカスだ。
ギャンブルに関してはオールマイティー。
ボートもオートもチャリも馬もの何でも来いや!だった。
母に決まった生活費を渡すとそれ以外は全部ギャンブルに消えていった。
父の言い分は「小遣いの範囲」だった。
伸子の両親は良く金の事で揉めていた。父は何故か母を殴らない。途中から、言いがかりをつけて特に、長女の伸子を殴った。
伸子は中学生の頃には殴られるのにも慣れてしまっていた。
殴る父より、子供が殴られているのに止めもしない母を憎んだ。
伸子の母は、いつも言っていた。
「子供が3人もいたら、お母さん一人では食べさせてあげられない。だから、私は子供の為に我慢する」
私の母は、何を我慢しているんだろう。
伸子には、ほとんど理解不能だった。大事なはずの子供が殴られているのにこの女は何を我慢しているというのだ。
それで出た伸子の結論は「要は金だ」という事だった。
自分が死ぬ気で働く気が無いから、子供を生贄に捧げる最低の女。
それを「子供のため」などと嘘の上塗り迄する。
母は殴られない。殴られるのは私と妹と弟だ。
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