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10年間植物状態だった男が目覚めた。彼は、昏睡中に未来を予知する能力を手に入れていた。
暗い世界に解き放たれた俺は、少しずつ世界が赤くなっていくのを感じていた。
そうだ、俺は目を閉じていたのだ。
少しずつ瞼を開いていく。
あれは夢だったのだろうか。
俺は、廃墟と化した東京を彷徨っていた。
大地震と津波に襲われ、ほとんどの人間は東京を去っていった。
その前に、ここはどこなのだろうか。
「落ち着いて聞いてください」
すぐ近くから声がした。
「あなたは10年間眠っていました。
何か私にできることはありますか」
声は出るのだろうか。
ヒューと気管から音が出た。
仕方がないので、大きく頷いて見せた。
その男は、俺に様々なことを問いかけたが、一つも当たらなかった。
力を何度も込めていると、腕が少し動くようになった。
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