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誰もいない。
私は自由だ。
テレビをつけると、芸人がコントをしていた。
大げさな身振り手振りにつられて、くすりと笑いが漏れる。
ソファーの真ん中に座り、少し音を大きくする。
「そんなこと、あるはずがないだろ!」
背の低い方が、背の高い相方にジャンプしながら頭を叩く。
どっと沸き起こった笑い声につられて、私も笑う。
「ただいま」
その声に、急いでテレビを消した。
飛び上がるようにソファから離れ、直立不動になる。
「気のせいかな。低俗なテレビ番組の音が聞こえたような気がするんだけど」
理人の堅い声。
私は首を左右に振ることしかできない。
「あー、疲れた」
着替えるために寝室に入っていくスーツ姿を目で追いながら、足元からあがってくる震えを止めることができない。
理人が、帰ってきた。
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