0人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな楽しい食事会が終盤にさしかかった時のことだった。
暑い、暑いというワードを繰り返し使う大人にうんざりしたのか、
薫が口を開く。
「ねぇ、きょうすけおじちゃん、夏と冬はどっちが好き?」
とっさに大人たちの目が点になる。
「えー、薫ちゃんそれは、難しい質問だな。」
「かおるはね、えーと、えーとね。」
きょろきょろと周囲を見渡す薫。
その姿に、夫妻も自然と微笑んだ。
何かを見つけた、薫は目を見開く。
「かおるはね、夏が好き!
だって、あそこに入れば夏も暑くないもん!」
そう言って指さした先には、冷蔵庫。
そのセリフに夫婦はお腹を抱えて笑っていた。
いつまでも、いつまでもリビングには幸せが溢れている。
その様子を恭介はじっと見つめていた。
それから一年後、自らがそこに入るとはまさか、
この少女も思ってもいなかっただろうに……。
最初のコメントを投稿しよう!