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弘樹と恭介は、同じ会社に勤める同僚。
いや、同僚というだけではなく、学生時代からの無二の親友だった。
小学校から同じ学校に通い、
中学、高校も同じ学び舎で過ごした。
高校卒業後、二人で夢をかなえようと一念発起して上京。
そんな二人の将来の夢は『日本一の漫才師』
上京して二人で転がり込んだ、何もない六畳一間のおんぼろアパート。
そこで、日夜、明日を信じて夢を追いかけた。
楽しかった。
貧しかったけど、楽しかった。
二人で夢を追いかけた日々が。
同じ時間にバイトにでかけ、同じ時間に帰ってくるよう二人で約束した。
それはすべて、漫才の練習時間を割くために、
そして二人のすれ違いの時間をなくすためだった。
そんな日々が、二年、三年と経つにつれ、
だんだんと芽がでないことに、互いに気づき始める。
二人とも口には出せなかったが、『あきらめる』
という文字が互いの脳裏をかすめていた。
そして、一番の引き金になったのは、ある日の弘樹の一言だった。
「恭介、俺、結婚するわ。
地道に、嫁さんと娘を食わせていくためにも、
だから、そろそろ俺たち……。」
誰よりも夢をかなえたかった弘樹にその言葉を言わせてしまった。
その気持ちを恭介は受け止め、
「分かった、解散しよう。」
そこで、恭介と弘樹の、二人の生活が終焉した。
ただ、おかしいのは、同じ同郷のよしみ。
帰ってくる故郷も結局一緒。
「なんだよ、結局、俺たちずっと一緒だな。」
恭介が高笑いしている姿を、いつまでも弘樹は
嬉しそうに見ていた。
堅実な道を歩もう。
二人で話し合い、
次に一緒に同じ会社の門を叩いたのは、
地元の冷蔵庫の製造メーカーだった。
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