二.事件

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「恭介、ねぇ恭介、聞いてる?」 注文したコーヒーのミルクが波紋になって広がる。 それを眺めながら昔の事を思い返していた恭介は 沙知絵の一言で我に返った。 「あっ、サチごめん。 そうそう、何とか上司達には俺がうまく言っているから。 ただなぁ……、そろそろ、会社も限界にきているかもな。」 そう言われた事に納得した沙知絵の 嗚咽が店内に静かにこだまする。 「あの日以来、私もどんな風に生きてきたかはよく覚えていないの。 ただ、薫がいた日々はけっして、けっし…て。」 大粒の真珠のような涙。 とめどなく流れて、テーブルに水たまりをつくる。   ここ半年、弘樹の奇怪な行動が職場内で目につくようになった。 最初は、そんな弘樹を同僚も会社も同情の念で見ていたのだが。 _____一年前、弘樹の娘、薫が何者かに殺された。 それも、死体はバラバラにされ、ある場所から見つかった。 ____。 町のいたるところに廃棄された複数のの中に、 分けて捨てられていたのだ。 そのセンセーショナルな事件は、小さな町を震撼させる。 ただ、もっと恐ろしい事はそんな惨い事件から一年たっても、 まだ、見つかっていないのだ。 犯人はもちろん、 薫の頭部だけが___。
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