第3話 90年代の打ち上げなんてこんなものですがな

1/3
前へ
/35ページ
次へ

第3話 90年代の打ち上げなんてこんなものですがな

 だがしかし。実際彼女達の後に演ってみて、げんなりしたのも事実だった。  度肝を抜かれたのはFAV(ファヴ)だけじゃなかった、ということだ。特にF・W・A(フラットウイズアスピリン)のヴォーカリストのヨースケは、いつもより精一杯声を張り上げようとしていて、逆効果になっていた。  わりあい整った醤油顔はメイクがよく映える。だがその外見が空回りしているようだと、横で弾いているFAVも、後ろで叩いているイキも、ベースのハルシも感じとってしまったのだ。  もともとヨースケはそう通る声ではないのだ。そして細い声である。ただ感情表現だけは結構豊かだったから、結構メイクで華麗に見えるルックスと相まって女の子に人気があった。それだけに、ショックは激しかったらしい。  終わった後でヨースケはハルシにに当たっていた。  いくら昔なじみだからって、やっていいことと悪いことがあると思うんだけど。そうFAVは思いもしたのだけど、そういうこといちいち言っていたら、イキあたりが「それじゃ俺は何なのよ」とか言いそうなんで、あえて彼女は言わない。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加