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「…ちょっと待って!」
連れられるがままに、私の足は動いていた。
猫は時々振り返りながら、早足になる私を置き去りにするように歩いた。
しばらくすると、突き当たりに出た。
正面には、「8番地区」と書かれた3階建ての建物があった。
左右を見渡す。
町並みは変わらなかった。
ただ、通ってきた道よりも少しだけ細くなっていて、工場のような大きい建物や、同じ背格好の家が道なりに続いていた。
商店や出店も、所々にはあった。
猫はある場所で立ち止まっていた。
それは正面の建物の横にある、ある書店の入り口だった。
それが「書店」だと分かったのは、入り口の上に『中央書店』と書かれていたからだ。
「ここは、8番地区っていう場所だよ」
息を切らしながら近づいた私に、猫はそう言った。
…8番、地区?
「8番地区っていうのはね、この世界の“どこか”にある場所のことだよ」
入り口の横には、見慣れない電話ボックスがあった。
クリーム色のボディと、丸みを帯びた赤い屋根。
ガラス窓の向こうに、ダイヤル式の赤い電話機が見えた。
公衆電話かな?って思ったけど、公衆電話って言うと、普通は緑の四角いやつを想像する。
けど、窓の向こうにある電話機は、まるで家庭電話機のような形をしていた。
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