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「誰もが、空の向こうに行けると信じている。キミはどこから来たの?」
「…どこから?」
「ここにはね、色んな時代の人が来るんだ。過去の人、未来の人。もう、世界からいなくなってしまった人も」
「私は…」
自分がどこから来たのか。
それに答えられるだけの言葉は、まだなかった。
猫は「電話をかけてみて」と言った。
電話ボックスの中にある電話機。
“もし、会いたい人がいるなら”
猫はそう言って、「行きたい日付を入力してみて」と言った。
受話器を外して番号を打てば、その場所に行ける。
そう言った。
「1つだけ注意して。その電話機は、キミの記憶と繋がってる。過去は変えることはできないし、未来だってそう。あくまでそこは、記憶の中に過ぎない」
「…記憶の、中…?」
「この世界から出る方法は一つだけだよ。過去を断ち切るか、過去を受け入れるか」
「過去を…?」
「さっきも言ったけど、ここに来る人はみんなそうなんだ。過去を捨てきれずに、同じ場所に立ち止まったままでいる」
この場所に人がいないのは、“時間が流れていないから”だそうだった。
どこにも属していない町。
だから、誰かとすれ違うこともない。
「キミは、何者なの?」
「ボクは、キミのような迷い人を、元の世界に帰すためにいるんだ」
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