かつての夢

4/13
前へ
/61ページ
次へ
 シーツをはぐってベットから飛び起きる。  その足で、カーテンを開けた。  久しく見ていなかった東京の景色に、目を奪われた。    「なんで驚いてるの?」  「…え?」  「キミが望んだんでしょ?この場所に来ることを」  猫は不思議そうな目で、私を見ていた。  この「場所」に来ること。  視界に入ったのは、一枚の張り紙だった。  部屋の壁に貼られた、「インターハイ出場」の手書き文字。  …懐かしい  そう思うと同時に、少しだけ胸が締め付けられた。  どこかでわかってた。  この場所が、遠い過去のものであるということ。  ずっと遠くに残してきたものであること。  振り返ろうとは思わなかった。  あの日々のことを。  飛べなくなった、踏み切り前の景色のことを。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加