かつての夢

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 「…ハル!」  なりふり構ってはいられなかった。  靴紐を結ぶ時間だって惜しかった。  玄関を開ける。  階段を降りて、街の向こうへ——  「どこに行くの?」  「…わかんないけど、でも…!」  ここが本当に「過去」なら、今すぐに確かめたいことがあった。  彼がいる場所。  彼がいる時間。  この感情がどこから来ているかは、どうでも良かった。  会って、確かめたかった。  夢ではいつもぼやけてた。  いつも気さくだった彼の横顔が、靄をかけたように見えなくなっていた。  追いかけても追いかけても、手が届かない位置にいた。  どれだけ早く手を伸ばしてもだめだった。  それが「夢」だってわかってても、この手を伸ばさずにはいられなかった。  
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