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嘘…でしょ…
目の疑ったのは、ありもしない光景が、そこに飛び込んできたからだ。
もしかしたら
そう思う心が、確かにあった。
だけど反面、そんなわけないって思う自分もいた。
あれからもう10年も経つ。
短いようで、ずっと長かった時間。
ずっと、自分に言い聞かせてた。
ちゃんと前を見なきゃって、思い込ませようとする自分がいた。
彼の背中を追いかけても、きっと届かないんだって、何度も言い聞かせてた。
諦めきれない自分がいることもわかってた。
夢の中で、どれだけ彼が私の前に現れたか、わからないくらい。
川べりの広間へと続く石段の上に、ポツンと座っている人がいた。
後ろ向きに被った帽子に、茶色いグローブ。
その後ろ姿が、「誰か」くらいはすぐにわかった。
忘れようにも、忘れられなかった。
ずっと追いかけていたんだ。
…ずっと、夢の中で手を伸ばしてた。
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