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「キミがここに来た理由は、なんとなくわかるよ」
猫はそう言った。
呆然と立ちすくむ私のそばで。
私は、どうしていいかわからなかった。
今すぐに彼に会いたかった。
だけど…
「ここは、…現実…なの…?」
「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える」
猫は、ここに来るまでに私に忠告していた。
この世界の「ルール」は2つ。
1つは、過去を変えてはいけないということ。
そしてもう1つは、過去を受け入れること。
その意味はわからなかった。
当たり前のことすぎて、それが“どういう意図なのか”がわからなかったからだ。
過去は変えられないし、受け入れなくちゃいけない。
ずっと、そう思いながら生きてきた。
何を今さらって感じだった。
「記憶の中…って、言ったよね?」
「そうだよ」
「…じゃあ、彼は?」
「彼がどうかした?」
「…生きてるの?」
「うーん。まあ、考え方によってはね」
…なに、それ
息の仕方も忘れてしまうくらい、動けなくなる自分がいる。
わかってるんだ。
こんなの、あり得ないってこと。
だけどもし、…もし、彼が生きてるなら。
「気をつけて。過去を変えることは許されない。一歩踏み間違えれば、キミは元の世界に帰れなくなる」
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