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走り出したら、もう止まれない。
踏み切りの線を越えたら、もう、後には戻れない。
私はもう、飛ぶことをやめた。
だから、わかってた。
振り返ったって、そこには何もないこと。
もう、手遅れなんだってこと。
なのになんで…
…なんで
「何しに来たん?」
——何しに?
できることなら、あなたがいる場所に飛んでいきたかった。
夢でもいいから、会いたいと思ってた。
理由なんてなかった。
考えるまでもないことだったんだ。
そんなことは。
ふと、周りを見てしまう自分がいた。
青く澄み切った空に、東京湾へと続く川の流れ。
嘘みたいに長閑な空気と、眩しい日差し。
何もかもが、はっきりしてた。
怖いくらい鮮明だった。
だから、もう一度彼の名前を呼んだんだ。
目の前の景色。
東京都内の街並み。
それを、「嘘」だとは思いたくなかったから。
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