…もしもし?

4/11
前へ
/61ページ
次へ
 「…どうした?」  「…いや、なんでもないの…」  「なんかあったのか…?」  「…え、いや」  階段を降りて、彼の隣に座った。  土手の斜面に生えた草は、クッションのようにふわふわだった。  ——あの頃と、同じ。  過去を変えちゃいけない。  猫が言うには、ここは過去でもあって、“現実”でもある。  だからくれぐれも気をつけてって、そう言ってきた。  同じ時間を過ごせばいい。  あの頃と同じように過ごせば、きっと元の世界に帰れる。  ばかばかしいって思った。  ここがどこかもまだよくわかってないのに、“過去を変えちゃいけない”って?  そんなこと言われたってわかんないよ。    ねえ、ハル。  …そう思わない?  「…本当に、ハルなの?」  ここが現実なら、「壁」の向こうに飛んでいきたい。  諦めていた現実をやり直したい。  そう思う以外になかった。  今すぐに、彼を抱きしめたいくらい。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加