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「…どうした?」
「…いや、なんでもないの…」
「なんかあったのか…?」
「…え、いや」
階段を降りて、彼の隣に座った。
土手の斜面に生えた草は、クッションのようにふわふわだった。
——あの頃と、同じ。
過去を変えちゃいけない。
猫が言うには、ここは過去でもあって、“現実”でもある。
だからくれぐれも気をつけてって、そう言ってきた。
同じ時間を過ごせばいい。
あの頃と同じように過ごせば、きっと元の世界に帰れる。
ばかばかしいって思った。
ここがどこかもまだよくわかってないのに、“過去を変えちゃいけない”って?
そんなこと言われたってわかんないよ。
ねえ、ハル。
…そう思わない?
「…本当に、ハルなの?」
ここが現実なら、「壁」の向こうに飛んでいきたい。
諦めていた現実をやり直したい。
そう思う以外になかった。
今すぐに、彼を抱きしめたいくらい。
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