…もしもし?

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 “戻りたい”と思ったわけじゃなかった。  少なくとも、あの当時の自分には、期待できるものなんて何もなかった。  戻ったって、何も変わらない。  どうせ戻れるなら、もっと昔の方が良かった。  そう思うことのほうが自然だった。  何かに期待するよりも、ずっとずっと。  あの頃、ずっと未来のことについてを考えてたんだ。  卒業して、大人になって。  これからどんな未来が待ってるんだろうって、朝起きるたびに考えてた。  眠れない夜だってあった。  靴を履いてグラウンドに立つたび、だんだんと遠ざかっていくイメージが、——怖くて。  諦めそうになる気持ちがそばにあって、どうしようもない不安が、屍のように横たわってて。    ずっと整理できなかった。  思うようにいかないことが、すぐ目の前にあった。  それでもこの場所に戻りたいと思えたのは、多分、知っていたから。  …今の私にとって、あの当時の自分の選択が、——きっと。  きっとそうなんだ。  きっと、あの時の選択が、…全部。  間違いを犯したとは言わない。  あの当時に戻れたとしても、私は多分、同じ選択をする。  もう一度、靴を脱ぐ。  グラウンドに背を向けたのは、偶然なんかじゃなかった。  だから…
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