2人が本棚に入れています
本棚に追加
“戻りたい”と思ったわけじゃなかった。
少なくとも、あの当時の自分には、期待できるものなんて何もなかった。
戻ったって、何も変わらない。
どうせ戻れるなら、もっと昔の方が良かった。
そう思うことのほうが自然だった。
何かに期待するよりも、ずっとずっと。
あの頃、ずっと未来のことについてを考えてたんだ。
卒業して、大人になって。
これからどんな未来が待ってるんだろうって、朝起きるたびに考えてた。
眠れない夜だってあった。
靴を履いてグラウンドに立つたび、だんだんと遠ざかっていくイメージが、——怖くて。
諦めそうになる気持ちがそばにあって、どうしようもない不安が、屍のように横たわってて。
ずっと整理できなかった。
思うようにいかないことが、すぐ目の前にあった。
それでもこの場所に戻りたいと思えたのは、多分、知っていたから。
…今の私にとって、あの当時の自分の選択が、——きっと。
きっとそうなんだ。
きっと、あの時の選択が、…全部。
間違いを犯したとは言わない。
あの当時に戻れたとしても、私は多分、同じ選択をする。
もう一度、靴を脱ぐ。
グラウンドに背を向けたのは、偶然なんかじゃなかった。
だから…
最初のコメントを投稿しよう!