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「…喧嘩、したんだ」
「いや、お前もいたじゃん」
「…あ、うん」
彼には“相棒”がいた。
小学生の頃からの友達で、幼馴染。
ずんぐりと太った体型に、お茶目な性格。
「アキ」って、彼は呼んでた。
山上彰君。
クラスは違うけど、親友なんだなって思った。
初めて会った時から、なんとなく。
「まじで悪気はなかったんだって」
練習試合であったこと。
当時のことを覚えてるわけじゃなかった。
“喧嘩した”って、彼は言った。
話の流れ的に、多分彰君と喧嘩したんだなって思えた。
だけど、すぐには思い出せなかった。
話を聞いていくうちに、(ああ、そういえば…)って、思い出せた。
そういえば、彰君と喧嘩してた。
春の県大会が始まるっていう時に、ベンチで揉めたんだっけ。
彼が言うように、悪気はなかったみたいだった。
彼の中では些細なことで、そんな大袈裟なもんじゃなかったって。
彼は反省してるようだった。
不貞腐れた態度を取ったことも、彰君の言葉を無視したことも。
練習試合で起こったこと。
あれは全部、“自分が悪かった”って言った。
もう少し、冷静になれば良かったって。
「…謝ったんだ?」
「いいや、まだ」
「…ふーん」
「お前はどう思う?」
「どうって…」
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