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思うようにいかなくて、マウンドの上でイライラしてた。
ストライクが入らず、狙ったところにボールがいかない。
3年生になったばかりの春。
彼は順風満帆だった2年間の成績とは打って変わって、思うような成績を上げられなくなっていた。
私はあんまり詳しくないから、全然そんなふうには見えなかった。
勝つか負けるか。
そんな単純なことくらいしか、当時はわからなかったし。
「別に誰かに当たったじゃないし」
「彰君はなんて?」
「“俺が悪い”って」
「じゃあ、そうなんじゃない?」
「なんでお前までそんなこと言うんだよ」
「…だって、自分でもそう言ってるじゃん」
「そりゃそうだけど」
どこか、思い詰めたような顔をしてた。
あの頃の彼は、2年生の頃とはちょっと違った。
いつも悩んでた。
あーでもないこーでもないとか言って、自分の投球フォームばかりを気にしてて。
わからなくはなかった。
野球のことは全然だけど、思うようにいかないってことは、なんとなく。
バーを高く感じるようになったのは、偶然なんかじゃなかった。
大人になるにつれて、だんだんとわかったんだ。
思うように飛べなくなった理由が。
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