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“もう一度飛びたい”って思ってるわけじゃないんだ。
もっとずっと、身近なこと。
胸の中にある気持ち。
夢は夢だし、現実は現実。
もういい大人なんだから、それくらいの分別はつくようになっている。
学生時代に戻ったって、自分の理想に近づけるわけじゃない。
それもわかってた。
だから…
「ちょっと寄ってみただけ」
「…ちょっとって、わざわざ電車に乗ってか?」
「うるさいなぁ」
なんだろう。
昔の記憶が、目の前で再生されていくかのように蘇った。
彼の言葉遣いや視線が、考えられないくらいに近くにあった。
懐かしい感じがした。
あの当時のこと。
彼が隣にいた頃のこと。
ハル。
不意に彼の名前を呼んでしまって、どうすればいいかわからなくなる自分がいる。
忘れたつもりはなかった。
彼の笑い方や、その横顔を。
少しずつ薄れていく輪郭があっても、心の中では、いつもいた。
ずっとそばにいた。
こんな時彼ならどうするだろうって、時々思ってたんだ。
隣にいるのが、当たり前だったから。
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