未来の記憶

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未来の記憶

 私たちはしばらく、河川敷にいた。  私が未来から来たことを、彼は信じてはくれなかった。  「…何言ってんだ、お前」  説明しようにも、説明できない。  言葉はうまく出てこなかった。  それ以前に、整理が追いつかなかった。  猫に言われるがまま、電話ボックスに手を伸ばした。  そのことを、ありのまま伝えようとは思った。  ただ、思うように説明できなくて…  「喋る猫ぉ?」  「…うん、だから」  「ごめん、ちょっと失礼」  「ひゃッ…!」  おでこに手を当てられる。  熱でもあるんじゃないか?  そう、言われた。  「…うーん、熱はなさそうだな」  「信じられない?」  「それ、真面目に聞いてる?」  「…うん、まあ」  そうか…  そりゃ、信じろって言う方が無理があるよね。  自分でもうまく整理できないのに、「猫が喋った」なんてよく言うよ。  なんて言うのがいいんだろうか?  未来から来て、ここは過去の世界で…  …うーん
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