未来の記憶

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 「で、その猫はどこにおるん?」  「あそこ」  「あそこ?…見当たらないけど?」  「…あれ、あそこにいたんだけどな」  土手の坂道の上を見たけど、いなかった。  …おかしいな  さっきまでいたんだけど…  「未来って、いつ?」  「へ?」  「その話に付き合ってやるから、教えてくれん?」  未来——  ばかばかしいけど、そうじゃない。  当たり前じゃない言葉。  “あり得ない”って思えることが、頭の片隅で弾む。  答えを持っているわけじゃなかった。  すぐに答えられるほどの確かな言葉を、用意できる自信はなかった。  10年後。  2024年。  そんなありふれた言葉たちを、どう扱っていいかも分からなかった。  そのままを伝えればいいとは思うんだけどさ?  難しいじゃん?  映画の中の世界じゃないんだし。  …かと言って、普通じゃないことは起こってるし。  「2024年!?」  結局、そのままを伝えた。  私がいた世界のこと。  「未来」のこと。  それが正しい情報なのかどうかはさておき、私が理解してる範囲内で。
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